子どもの事故予防地方議員連盟(コドジコ)の研修に参加をしてきました。初日の研修は、CDR(子どもの死亡検証)の取り組みについて学びました。

北海道のCDR(Child Death Review)モデル事業の現状と課題
今回の研修では、北海道庁において、子どもの死亡検証(CDR)の取り組みについて詳しい説明を受けました。CDRは「Child Death Review」の略で、子どもが亡くなった事例について、医療・警察・消防・行政・法曹など多機関が情報を持ち寄り、原因を多角的に検証し、予防可能な死亡を減らすことを目的としています。
この仕組みは、成育基本法や死因究明等推進基本法にも基づくもので、欧米では既に長年の実績がありますが、日本ではまだ一部の自治体で試行されている段階です。
北海道の取り組みの始まりと体制
北海道は、北海道医師会からの要望や議会での議論を経て、令和3年11月から国のモデル事業に参画しました。国が示す「都道府県Child Death Reviewモデル事業の手引き」に準拠し、次の2つの組織を中心に運営しています。
- 推進会議:医師、小児医療の知見を持つ学識経験者、行政関係者で構成。死亡事例の把握やデータ収集環境を整えます。
- 多機関検証ワーキンググループ(WG):推進会議の構成員や学識経験者が参加し、事例の検証や政策提言を行います。
事務局は北海道保健福祉部子ども政策企画課が担い、弁護士会や警察、市町村会、消防長会など多様な機関がオブザーバーとして参画。特に法曹や警察との連携は他県にない強みとされています。
事例の把握と検証の流れ
死亡事例は協力医療機関から事務局へ連絡が入り、情報を収集した上で「死亡台帳」に記録されます。事業開始当初は9機関でしたが、令和6年度には30機関にまで拡大。それに伴い、把握件数も増加し、令和6年度は19件、道内の子どもの死亡全体の約1割強を占めます。
事例数が多い地域で現地検証を行うなど、地域性に配慮した対応がとられています。

検証から提言へ
令和6年度からは「予防策」と「提言」を明確に分けて報告する方式を導入しました。
- 予防策:現場で実行可能な具体策。
- 提言:SIDSチェックシートの活用推進、日本小児科学会地方会を通じた情報収集体制の改善など、制度的・政策的働きかけ。
こうして現場レベルから政策提言まで幅広く取り組むことで、再発防止に向けた多層的な仕組みを構築しています。
課題と今後の展望
最大の課題は、ご遺族からの同意取得の難しさです。北海道の同意取得率は55%と、他の自治体に比べて低め。悲嘆に寄り添いながらも、社会的意義を丁寧に説明して理解を得る努力が求められます。
また、CDRそのものの認知度向上も課題。担当者は「メタボ」のように誰もが知っている言葉になるまで普及させたいと話していました。
将来的には、死亡小票を活用した数値分析や、これまでの検証結果の振り返りを進める予定です。事例増加に対応するため、事務局体制の強化や委託化も検討されています。
直営方式の意義
北海道は、モデル事業を国への委託ではなく「直営」で実施する数少ない自治体です。自らの手で体制を整え、地域の事情を踏まえた検証を進めることで、現場に即した改善策を導き出しています。
今回の説明を通して、CDRが単なる「死亡原因の究明」にとどまらず、「次の命を守るための知恵の集積」であることを強く感じました。こうした仕組みが全国に広がれば、子どもの命を救える可能性は確実に高まるでしょう。

